本棚お助け隊 菅原でございます。
フランス・パリ、またレバノン・ベイルートでのテロ被害につきまして、犠牲になられた方々に心より哀悼の意を申し上げます。
またこれまでもトルコ・アンカラやタイ・バンコクなど多くの地で、相次ぐ航空機事故などで多くのテロ犠牲者が発生しています。
東トルキスタンやチベットなど多くの地で困難にある人々がいます。
日本においても拉致被害者など未解決問題があります。
一刻も早く一人でも多くの人が平和に暮らせるよう、祈ります。
今回のエントリーです。
古本屋として、売ってよいのかどうか、悩む本があります。
例えば、「自殺の方法」などの本。
また、世には、「禁書」や「発禁本」など、その国・地域の法律や権力者によって禁止・制限されたり、自主規制や版権の問題などで事実上入手が難しい本もあります。
例えば、ドイツでは、ヒトラーの著書「我が闘争」が販売禁止です。
アーレントは、自らユダヤ人ながら、ナチスの役人だったアイヒマン裁判で「悪の凡庸さ」を言い、自立的に考えることの大切さを言います。
断罪や禁止などで物事の本質を目に入らなくすることは何も解決にならないことを訴えます。
そしてアーレントの著書は一部の国で事実上発禁となっているようです。
日本でも、禁書論争がたびたび起こっています。
最近も、ある犯罪者の自伝が論争を呼びました。
冒頭の自殺関連書籍については、規制騒動も起きていたようです。
言論や表現、思想信条の自由を守ることと、潜在的な恐怖などとの相剋なのかもしれません。
個人と社会との対峙などもあるのでしょう。
また一方で、売りたい、世の人に知ってほしい、という本もあったりします。
数々の古典的良書などもそうですが、壮絶な現実を扱った本などもそうです。
例えば、「チベットの焼身抗議」。
著者は中原一博さん。ダラムサラのチベット亡命政府で建築設計をされている方です。
本には、これまで(2015年8月1日)までに焼身抗議をした143名の記録があります。
僧侶だけでなく、農民や遊牧民などの俗人もいます。
10代や20代の人たち、幼い子供のある、若い父や母たちが焼身をしているという事実。
焼身したが生き残った者は、当局に拘束され、帰ってきたことはなく、そのため焼身者を前に、市民も最期まで見届けるのだといいます。
このような本は、やはり売りたいと思います。
あくまで古本屋ではあるのですが。
結局は、
「本とは何か」
という議論になるように思います。
本は、つまりは「言語などで視覚化・顕在化された情報の集積物」が本質です。
現在は電子書籍などもありますし、古くは口頭伝承もありますし、詩や音楽の形で伝承される情報もあります。
本の中身には知識や知恵など、いろいろなものがあります。
こういったものをいかにして後世に残すのか、と考えると、中には「残さざるべき」ものがあるかもしれませんが、結局は、それは後世の人が判断したりすることで、今の我々にできることはただ「残す」ことのみなのだと思います。
結局、私たち古本屋の役割は、本を扱っているものとして、できる限り多くの出版物を次の人へ渡してゆくことだと思うのです。
それが私たち本棚お助け隊が最低限できることであり、最大限やるべきことだと思っています。