自分自身、あるいは自分の子どもにこの仕事を勧めたいか、という尺度で仕事のあり方を捉えてみる。宅配業界の現場レポートの本を読みながら。


仁義なき宅配
本棚お助け隊 菅原でございます。

今回は「仁義なき宅配: ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン」という本の紹介です。
著者は横田増生さん。
この本は、アマゾンの配送倉庫での潜入取材を書いた「潜入ルポ アマゾン・ドット・コム」に続き、ネット宅配業界を支える仕事を実体験取材で書いた本です。
著者は、ほかにも「ユニクロ帝国の光と影 (文春文庫)」など、便利な現代社会を支える問題を積極的に書いています。

なお、この本は2014年に取材され、2015年9月に発行されています。
それから現在までの間にも宅配業界では様々な動きが起きていますが、この時期的要素を前提にあることをお断りします。

この本は宅配業界や通販業界の現状を伝えるとともに、仕事のあり方について考える本ともなっています。

翌日配送や即日配送は宅配業者さんあってこそのもの


アマゾンや楽天などの通販サイトにて購入したものが翌日届くのが当たり前になっていますよね。
ましてや、当日配達なんてものもあります。
しかも送料は無料がスタンダード。
注文から2時間以内に届くアマゾンのプライムナウヨドバシカメラ等でも当日配達のエリアは拡充される一方です。

オフィス用品のアスクルもほぼ「キョウクル」。
実に便利。
菅原もポチポチと利便を享受しております。
本棚お助け隊のお客様への配送も、日本郵便や佐川急便、クロネコヤマトの3社を中心とする宅配会社さんとそこで働く皆さんのご尽力あってこそです。

こういった通信販売の仕組みを支えているひとつは、宅配業者さんです。

送料無料ですぐに配達。
とても便利で一度享受するとやめられません。
一方で、その仕組みを支える為には相応の負担があることも事実です。

過去には、Zozotownの前澤友作社長が送料のことでツイッター炎上を起こしたこともありました。
2013年4月に、佐川急便がアマゾンの商品宅配から撤退しました。

最近では、アマゾンが自社専用の航空機をリースして配送網を強化するというニュースも新しいです。
ほかにもドローン配送やUberなどによる宅配兼業/請負、等が始まると言われていますね。

技術革新もさることながら、最新設備を誇るクロネコヤマトの羽田クロノゲートにて潜入取材と公式な取材をしている筆者によると「物流業務に人手がかかることは変えることができない事実」
昨今はラストワンマイルの戦いと言われるくらいに物流の現場では過酷なサービス品質争いが繰り広げられています。

筆者は、実際にアルバイトとして働くことで実地取材を進めます。

例えば、このようなアルバイトをします。
●ヤマト運輸の配送を受託する業者の軽トラに同乗
・1個の配達でもらえるのが150円程度。1日に配達できるのは100個強。そこからガソリン代などの経費も賄う。決しておいしい商売ではない。
・朝の宅配ボックスの取り合いで他社に負けると配達が滞る。

●佐川急便のセンター間をつなぐ幹線輸送車に同乗
・900個で10トン近くの荷物を人手で4時間で積み込み、夜間走行し、1時間半で下す。
・採算ベースでは片道10万円以上は本来必要なところ、8万円台で佐川から受注する。

●クロネコヤマトの羽田クロノゲートにて潜入バイト取材
・マニュアルが徹底されておらず、人材が育たない現場。
・夜勤にてクール便仕分けのアルバイト。1カ月で足の小指の爪がはがれる。
・丁寧な仕事よりも効率が優先される。
・「取扱を丁寧に」などの、大量に流れてくる通販業者からの荷物に貼ってあるシールは「腹立たしいことこの上ない」。仕分け個数のノルマの前には機能するわけがなく、「大切に扱ったのは運賃表通りに(定価で)支払う単価の高い個人間の荷物」。

●羽田クロノゲートの公式取材
・公式取材で構内を案内されると、勝手知ったる現場で、いつもは怒鳴らない現場リーダーが無用に怒鳴っている。

こういった取材で現場を見せてくれています。

速い配送を支える仕組み・現場


もはや生活の一部になった「翌日配達」。
なぜ今日の午後に預けたり注文したりした荷物が、明日には配達されるのでしょうか?
宅配便の荷物が翌日到着するためには、以下のような流れになっています。

●当日夜まで:地域のセンターへ荷物を集める。
●夜間:センターで行き先別に荷物を仕分ける。
●早朝:各配送地域のセンターへ荷物が到着する。

このように、配送先へきちんと運ぶ「ハブ」と言われる仕事、「仕分け」が、全て夜中に行われていて、そのことが大前提です。
私たちが寝ている間に、たくさんの方が働いているからこそ、実現している仕組みですね。

仕事のあり方について考える


筆者は、終章「宅配に”送料無料”はあり得ない」で、宅配便運賃がその労働に見合ったものになっていないことを、宅配ドライバーの口を借りて提言しています。
そして問題を解決するのは、我々、利用者が考えることが必要であると言います。

例えば、不在の配達物が2割に上り配送効率を圧迫している問題について、「もし自分で指定した時間に受け取れないのなら100円をお客さんから頂くという発想」や、
「『下積厳禁』や『ワレモノ注意』~など自分の発送する荷物だけを特別扱いするように要求するのなら、その分の料金を上乗せして払うべきだ」など。
合理的な提案です。
一方、実際の導入には大手宅配会社が一定の足並みを揃えるなどをして利用者の理解を求めることが必要になると思いますが、相互に競合関係にある宅配業者がそのような動きを共にできるかという問題があります。

また、そもそも論として「自分自身が、あるいは自分の子どもを宅配業界で働かせたいと思うかどうか」という尺度で考えると、そう思えない業界であると指摘し、「利用者が一度、その宅配産業が職場として魅力的であるかどうかを考えてみることが必要」と、すでに制度疲労を起こしている現場を見てきた者として提言しています。

それと言うのも、筆者はこの取材の経緯で体調を崩してゆきます。
原稿を仕上げてゆく2014年11月に、原因不明の体調不良やうつ的症状を発症。
いくつかの専門医を訪ねても原因がはっきりしない。
数か月間にわたって夜勤の宅配荷物仕分け作業を続けたことによる「不眠」が原因だと著者は言います。
24時間動き続けるセンターとそこで働く人々を前提としたシステム。
夜勤は外国人労働者が4割に上り、契約期間は2か月間。再契約は1か月経過しないとできないという条件(羽田クロノゲートの場合)。
そのような仕事の仕方を前提にしているのは不健全であると著者は指摘します。

運送業・宅配業界の差別化


運送業者も仕事の差別化ができるところが生き残ってゆくのでしょうか。

例えば、
「しろくま便」を運営する株式会社ストレートさん
こちらは「ケーキ配送のプロ」
ケーキの中でも特に「ウェディングケーキ」
途中で壊れてしまいましたなんて、絶対に許されないですよね。
社長の牛沢昭宣さんに話を聞くと、ウェディングケーキ配送のコツは「とにかく丁寧に運転すること」
言うは易く行うは難し。
急加速急ブレーキなどもってのほか。急とつかなくても、ちょっとした振動で崩れてしまうかもしれません。
しかも一生に一度。替えが効かない。
当然ながら道路には、自車だけではなく対向車や並走車、歩行者などイレギュラーな要素もたくさん。
そんな中で、運転技術もさることながら、神経も相当に使うお仕事なのではと思います。
だからこそ差別化に成功しているのだと思います。
しろくま便さんでは、ウェディングケーキを初めとして、お花など、繊細に運ぶことが要求されるものならどんなものでも取り扱うということです。

菅原も通販事業者として深く考えさせられる本でした。

菅原 大司 の紹介

株式会社ブギ 本棚お助け隊 の代表取締役です。
カテゴリー: スタッフブログ   タグ: , ,   この投稿のパーマリンク 投稿日: 作成者: 菅原 大司

コメントは受け付けていません。